下請け事業者の売上はどこまで税務署につかまれているか

税務調査
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 建築関連工事や各種設備工事などの方の決済方法は、現在はほとんど振込です。以前は手形や小切手、現金が混在していましたが、現在は、仲間内の少額の取引を除き、ほとんどありません。ほとんどが、下請けとして仕事を受けているため、税務署には元請からの取引資料がかなり蓄積されています。そして、この資料には振込先の銀行名、口座番号等が記載されています。調査に選定されると、あらかじめ銀行等で預金取引内容を復元し、調査に臨む場合もあります。

 ところで、これらの下請け業者等に対する外注費(調査対象者にとっては売上)の取引資料の収集には、いくつかのパターンがあります。一番多いのは「一般収集」という方法によって収集されたものです。これは、税務署に確定申告しているほとんどの法人及び一定規模以上の個人事業者に対し、特定の勘定科目(例えば外注費・接待交際費など)を指定し、年間取引の一定金額以上(たとえば外注費なら1年間で50万円以上、接待交際費なら1回5万円以上など一定の条件を指定)について、取引内容、取引金融機関などを、任意に提出してもらうものです。これらは、任意ですが提出しないと非協力か経理がズサンで提出できない会社と判断され、税務調査に選定される可能性も高くなるため、、協力の度合いは高いといえます。個人事業者の調査においては、極めて大量かつ有効な資料と言えます。

  次に有効なのは「調査等による収集」です。これは文字通り、国税局や税務署の調査担当者が調査に入った際、その取引先に関する取引内容を資料化するものです。調査官が調査に有効と思われる資料を優先的に収集するので、中身は濃いといえます。これらの蓄積された資料から総合的に判断し、調査対象を選定しています。

 同様に有効なのは「資料収集専担者(開発担当特別調査官や機動官と呼ばれる)」が収集した資料です。彼らは、税務調査に関係ない官公庁や団体等から大量収集するとともに、調査官の金融機関調査に同行して、せっせと横目資料を収集しています。マイナンバー導入前から、個人事業者の預金情報はほとんど把握しているといっても過言ではないでしょう。なお、金融機関から収集した資料は一般的には「重要資料」とされ、統括官以上が個別管理しています。また、国税局の査察部門には資料収集の専門集団(情報班)があり、内定調査も実施し、査察部門(実施班)での活用を目的としています。そのため、多数の資料情報を蓄積し、査察以外の国税局部門や税務署に交付することは、原則ありません。査察以外の部署が中途半端な調査で終わらないように、特に厳格に管理しています。

※ 横目資料…本来金融機関(銀行)調査は、調査先を特定して行うこととなっており、普遍的に納税者情報を収集してはならないことになっている。個人情報の観点からである。ところが、税務署にとっては、預金通帳(取引内容)を入手できると不正の発見等に結びつきやすい。ただ、不特定の預金者情報を直接収集できないので、他の個別の調査事案の銀行調査の際、いっしょについていき、使えそうな預金情報を「横目」で収集する。近年、最高裁により「横目資料は違法収集証拠であるが、行政処分を取り消すまでには至らない」とし、是認されています。

 預金内容を復元すれば、取引内容(売上金額)は一目で明白となります。

 また、これらの業種については、書類も少なくお金の流れも単純なので、若い職員が一人で調査に行くのに向いている事案です。職員名簿を見て、調査担当者がベテランの上席調査官であったり、若手とベテランの2人で苦闘な場合、不正の事実をつかんでいる可能性が高いといえます。重加算税を賦課する場合は、原則として「質問応答記録書」の作成が必要なため、記述者兼研修として若手職員を同行してくるのです。

 いずれにしても、申告に誤りがあった場合は、早々に修正申告や期限後申告を提出しましょう。脱税が発覚するのは、時間の問題です。調査着手前の提出には、優遇措置が設けられています。

※ 質問応答記録書…警察における調書と同じようなもので、本人の供述を文書として証拠化するもの。最後に本人に署名押印してもらう。強制力はなく、任意作成の書類であるが、一旦署名押印すると、税務署にとって重要かつ有益な証拠となるものであるが、納税者にとってはなんの利益もない。申告が過少(申告漏れ)の部分は当然修正しなければならないが、重加算税に該当するかどうかは、慎重に検討しなければならない。

 なお、この記事の内容は実例を加工したものであり、また、筆者の私見に基づくものです。結果に責任を持つものではありません。あらかじめ、御了承ください。

                             

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