国外資産運用収入・租税条約による情報交換資料から調査選定

税務調査
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 日本の居住者は、国外の所得も含め、すべての所得が課税されます。これは、「全世界課税」といわれます。すべての所得を日本で確定申告し、国外で課税された税金があれば確定申告上外国税額控除として差し引き、2重課税にならないよう調整しています。従って、外国の利息や配当など、資産運用益は確定申告の必要があります。であれば、税務署が把握しているかどうかにかかわらず、きちんと確定申告しなければなりません。

 次に、税務署がその事実を把握しているのかどうかですが、税務署から連絡があったのであれば、把握していることを意味します。では、どのように把握したのでしょうか。

  税務署(国税庁)は資料情報が調査にもっとも有効であることを認識し、あらゆる機会をとらえて、取引情報等の収集をしています。それは、国内だけに限定されません。国際取引が日常となった今日では、各国とも同様に、国外取引の情報収集に力を注いでいます。そこで、租税条約を結び、情報の相互交換を行っているのです。租税条約による相互情報交換制度はいくつかあるのですが、最も量の多いものは「自動的情報交換資料」と呼ばれるものです。これは相当昔から行われているもので、ものすごい量となります。各国で基準は異なりますが、簡単に言うと、一定の基準に達する支払い等について、金融機関等に、その取引内容の提出を義務化します。日本では、「法定資料」といっています。こ のうち、外国の住所のものを、その住所地の国へ単純に送付するものです。

 一例として「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」には、非居住者又は外国法人に対して、給与・報酬等の支払いをする場合の支払調書の提出について」には、該当国には2枚提出するよう記載されています。これは、1枚を該当国に送付するためです。自動的情報交換資料が国税庁に送付されると、翻訳されて全国の各税務署に送付され、活用されます。資料の精度の問題もあるので、通常は「お尋ね文書」や実地調査で内容が真実かどうか確認してからの課税となります。

 国外取引は、脱税の温床となりますので、各国とも租税条約に基づいて種々交渉して、積極的に取り組んでいます。ただ、例えば、日本人が海外に会社を設立し、その会社の住所で個人としての各種届出や取引を実施した場合、この資料からこぼれ落ちてしまうのではないか、とも考えられます。逆に言えば、その資料を入手できれば、相当有力な資料となると思われます。国税庁は、近年海外のペーパーカンパニー所有者の情報を含め、より有効な資料収集のために各国の租税当局との相互協力を拡大しており、これらの把握は時間の問題と考えられます。

 海外所得等を秘匿している居住者は、税務署から連絡がくる前の、自主的修正申告をお勧めします。

  なお、この記事の内容は実例を加工したものであり、また、筆者の私見に基づくものです。利用に当たっては、税理士等にご確認ください。

                           

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