無申告者が得をするという実態?

税務調査
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 所得税等(所得税及び復興特別所得税)及び個人事業者の消費税等(消費税及び地方消費税)には確定申告期限が定まっています。所得税等は翌年の3月15日、消費税等は翌年の3月31日です。両者とも暦の1年(1月1日から12月31日)が対象期間であることは、ご存知のとおりです。申告期限は、納税の期限でもあります。

 以前、芸能人のT氏が無申告で税務調査を受け、期限後申告書を提出したという報道がありました。

 ところで、期限後申告の場合のデメリットは何でしょうか。まず、無申告加算税がかかり、(態様により本税の5%~20%)申告書の提出が期限後ということは、税金も納付してないでしょうから、未納の税金には納期限の翌日から延滞税(利息相当…参考:令和6年年利2.4%程度)がかかります。その他、青色申告者の特典である青色申告特別控除(65万円)が受けられなくなること(10万円控除は受けられる)、調査を受けて修正申告や更正の場合、後日修正申告を提出する場合、過少申告加算税ではなく無申告加算税がかかること(5%ほど多い)、位しか思い当たりません。

 税務署が無申告者調査をする場合、通常5年間遡及します。「偽りその他不正の行為」がある場合は、さらに2年間遡及します。これは、申告している納税者の調査遡及年分と、原則変わりません。

 そこで、したたかな納税者が登場します。まず、申告している納税者が税金をごまかしている場合、無申告者と比べ「隠ぺいまたは仮装」「偽りその他の不正」の立証がはるかに簡単です。そのため、申告している納税者は、「7年遡及で重加算税」が容易に行われます。ところが、無申告者の場合は、悪意で税金を払っていなかったとしても、「忙しくて」とか「よくわからなくて」とかを言い訳にすると「隠ぺいまたは仮装行為等」があったことを立証するのは極めて困難です。国税不服審判所の裁決や判決を見れば、無申告者に対する重加算税の賦課件数がいかに少ないか、がわかります。ある意味では、申告すらしないわけですから、よほど悪質と考えられもします。

 これ以外も実は、実質的にお得(?)な点がいくつかあります。まず、税務署が確実に5年ごとに調査に行くわけではないこと。また、調査に来た時用に、書類等を5年分まとめて保存しておけば、調査官が決算を行い、確定申告書も作成してくれること。現職の頃、たまに実例を見かけました。ある意味、税務署のお墨付きの申告書です。これは、税理士費用(仮に40万円/1年とすると、5年で200万円の節約)、及び税務職員が提出した申告書が再度調査されることはないこと(国税通則法により再調査は原則禁止、ただし新たな事実があれば、再調査ができることになっています。)これに比べ、自分(税理士が作成した場合でも)で提出した申告書は、当然通常の税務調査の対象になります。

 住民税は、国税と同年数(この場合は5年間)遡及しますが、国民健康保険料(税)については、2年間しか遡らない地域(例えば、東京23区)あり、3年分が切り捨てられます(もちろん当初決定額が減額されるわけではありません)。調査への対応も、何日も拘束されるわけではありません。書類を持って行ってもらえばOKです。丸投げするだけです。

 国税内部では、「無申告者」に対する法体系が甘すぎると昔から言われていますが、法改正等の予定はありません。

 なお、T氏の場合は有名人なので、世間にさらされ、一般人とは異なる厳しい制裁を受ける結果となってしまいました。ある意味、気の毒だと思います

 なお、この記事の内容は実例を加工したものであり、また、筆者の私見に基づくものです。利用に当たっては、税理士等にお尋ねください。                              

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