現金商売調査法(推計課税)

税務調査
この記事は約4分で読めます。

 

 税務調査は、原則として事前通知をすることになっています。ただし居酒屋や風俗店のような現金業種では、予約して調査の臨んだのでは、都合の悪い書類は捨ててしまい調査が難しくなることが想定されます。国税通則法の改正により、単純に現金商売だから無予告、というわけにはいかなくなりましたが一定の部内基準を満たせば依然と同様に無予告調査ができます。

 また、これとは別に現金商売には「内観調査」というものが、多く行われています。これは、事前に客として実際に飲食を行い、情報を収集しておくものです。この事例の場合、内観調査により推計した売上が過少であると判断されて調査に選定されました。

 では、帳簿や書類があまり保存されていない場合は、どのように調査額を算出されるのでしょうか。実額算出ができない場合は、推計によって調査額を算出します。主として家族従業員のみで営業を行っている場合など、売上管理がルーズな者は、まだまだ存在します。売上の受領が従業員ではなく、家族従業員であれば、売上をポケットに入れられる可能性が無いからです。その場合、売上の記帳がいい加減になるということは、おおいにあり得ることです。

  (1) 現金監査

 これは、臨場時に手持ち現金を数えてもらい、そこから釣銭を引いた金額と、その時点の売上伝票の合計額が一致するかを確認するものです。実際の現金有高が伝票合計より多ければ、売上計上漏れを想定します。

   ※ 売上伝票合計(売上)=現金有高ー用意した釣銭+レジからの小口支払分などの出金

  (2) 仕入反面調査による本人係数による推計

 これは、本人が比較的書類(特に売上伝票)が揃っている場合に有効です。本人の実際の売値(定価)に対し、対応する仕入がいくらかを調べ、本人の差益率を(粗利)を算出し、反面調査で把握した年間仕入金額から年間売上金額を算出します。

 ※ 例えば、250円で仕入れたビールを500円で売れば粗利は50%になります。その他、ご飯類は一人前が何グラムかを実測し、年間のコメ仕入量から、一般の炊き上がり倍率を用いて年間食数を算出し、その店の一食当たり平均単価をかけて、年間売り上げを推計算出します。麺類については、同様に粉から推計します。これらは実際に計算すると、そこそこ正確な数値がでます。

 (3) 仕入反面による同業者係数による推計

  本人の書類の保存状況が悪い場合は(2)の方法は使えません。その場合は、税務署に申告している同規模・同業者の差益率の平均値を本人の仕入金額にあてはめて、売上金額を推計します。この方法は、更正(本人の納得が得られない場合の税務署からの一方的通知)でよく用いられるため、訴訟に耐えられるよう、ルールが厳格に定められています。(恣意性の除外)

 (4) 資産負債調べ

 これは、別角度の推計方法になります。本人の預金増、借入金返済、資産取得、生活費等から逆算して「所得金額」を推計します。他の損益計算書(PL)推計と併用する場合がほとんどです。例えば、生    活費が300万円でその年の預金増が200万円の場合、500万円 の所得(利益)があったと推計するもので、説得力があります。

 (5) 調査対象者が一切調査に協力してくれず、仕入などの取引先が一部しか分からず、所得金額推計の核(柱ともいいます)となるべきものがつかめない場合、その先の推計法があります。

 各業種に適した係数を探し出し、それをもとに同業者から情報をもらい、推計算出します。例えば、理美容院や蕎麦屋さんでしたら水道光熱費の使用量がひとつの指標となります。売上と密接な比例経費と言えるからです。それさえもつかめない状況、極端な場合は飲食店のテーブルや椅子の数(席数)で売上を推計する場合もあります。

  ※ 税務署の推計は、一般的には実際より少ない数字のなる場合が多いというのが実感です。領収書等が無くても自動的に必要経費を認容してくれ、また重加算税になる可能性は少ないのですが、消費税の課税仕入れは一切認められないので注意が必要です。本人が一切調査に協力してくれなかったり、推計の方法が見つからないといって、明らかに正しくない申告が認められることはありません。税務署からの逃げ得はありません。

 なお、この記事の内容はもっぱら筆者の主観・意見であり、内容に責任を負うものではありません。 参考に当たっては、税理士等にお尋ねください。

                             

コメント

タイトルとURLをコピーしました