「質問応答記録書」は作らせない
税務職員が不正な申告内容を見つけると「質問応答記録書」を作成し、サインを求めます。「質問応答記録書」とは警察の取調べ調書のようなもので、主に納税者が不正をしたという物的証拠がない場合に作成し、不正の事実内容を文書化し、本人に認めさせ、場合によっては後の裁判の証拠資料として活用することを目的として作成する書類です。数年前に国税庁が考え出した文書で法令規定はまったくなく、昔は「一筆」と称し、「私は税金をごまかしていました。今後はきちんと申告・納税をお約束します」などといって署名押印をさせられていました。これでは訴訟の際の証拠資料として使えないので、国税庁が全国統一の様式・内容を案出したものです。
これは結論からいうと、納税者にとっては「百害あって一利なし」と言えるものです。以下の理由によります。
①その場で(税務職員が)読み聞かせればいいとなっており、手渡してじっくり読ませない。ただ でさえ調査で動転しているので、納税者はいわれるままにサインする。
②コピーは渡してはいけないことになっている。(後日個人情報の開示請求制度を利用すればコピーを入手することはできます)
③「質問応答記録書」は税務職員が何度でも作成できる。税務署にとって都合のいい書類のみ証拠として活用することができる。
署名を拒否した場合、調査官は「拒否した理由を聴き取って記載する」ことになっています。「書かれている内容が真実と違う」ことであれば、そういえばいいのですが、「だいたい合っている」場合でも、「合っている」と断言しない方がいいでしょう。サインが無くとも回答によっては、同様の法的効果があります。調査時の異常な雰囲気もあり、言われるままにサインをしてしまう方がほとんどです。税理士があとで内容を聴いても、ほとんどの方が何を言ったのか覚えていません。
サイン拒否の理由は「ネット等で見たら、法的根拠も義務もない書類なのでサインする必要が無いと書いてあったので。」と答えるのがいいでしょう。内容について肯定も否定もしないことです。なお、国税庁のマニュアルには「サインを強制したとの印象を与えないように」と書かれています。
ただし、税理士のいないところでの「拒否」は調査官の想定外なので、さらに税務調査を厳しくされる可能性もあります。いずれにしても「不正等」が真実であれば、嘘をいってはいけません。調査が長引くだけです。嘘は必ずばれます。これは不正をしていない場合の対策です。できれば対応のできる税理士に依頼すべきでしょう。
また、審査請求等で争う場合は、手数料と時間を費やして「個人情報の開示請求」により、この写しを入手することになります。
上記記載の意見は筆者の私見によるものですので、結果を保証するものではありません。あらかじめご承知いただき、必要に応じて税理士にお尋ねください。税務署に尋ねても、無駄だと思います。
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